第2回 TSMTP Symposium in Sapporo 抄録

Educational Lecture

九州大学AROの取り組みとTR教育プログラム

杉山 大介(九州大学 先端融合医療創成センター)

画期的な新規医薬品創出に向けて、多くの製薬企業がオープンイノベーションを推進している。一方で、アカデミア研究者と製薬企業の言語を「トランスレーション」できる人材は、双方に充足しているとは言い難い。九州大学AROは医薬品開発の実際を学ぶプログラムを提供することで、Translational thinkingの基本を理解した、将来の創薬研究開発を担う若手人材を育成してきた。本シンポジウムではこれまでの九州大学AROが取り組んできたシーズの探索、開発の支援とTR教育プログラムについて紹介する。


橋渡し拠点との協働による未来医療の開発

井上 隆弘(大阪大学医学部附属病院未来医療開発部)

文部科学省、AMEDが中心となり、橋渡し研究を支援する拠点が全国に10ヶ所整備され、未来の医療に貢献する医療技術の創出を推進している。現行の橋渡しプログラムでは、拠点以外の機関における橋渡し研究の推進も課題に挙げられており、各拠点のリソースを外部の研究機関や企業に対しても提供することが可能である。アカデミア発シーズの多くは企業単独では開発が困難な医療技術であり、拠点が研究者に寄り添って支援することで実用化に繋げている。本セッションでは、大阪大学の事例を中心に橋渡し研究拠点の機能を説明し、拠点との協働による開発について説明する。


MEDISO(Medical Innovation Support Office)を活用してみませんか?

八巻 心太郎(株式会社三菱総合研究所 MEDISOプロジェクトマネージャー)

2018年2月、医療系ベンチャー・トータルサポート事業「MEDISO」が厚生労働省の委託事業として始まりました。薬機法の対象となる医薬品、医療機器、再生医療等製品の実用化に向けた課題を抱えた医療系ベンチャー企業、アカデミア等と、各分野の専門家(サポーター)とをマッチングし面談を実施。相談者の「困りごと」の解決のために、多角的な観点からのアドバイス、支援計画の作成、VC等へのプレゼン資料作成支援、フォローアップ等を行い、あらゆる相談に対してワンストップで支援します。医療系のベンチャー企業の皆様、シーズをお持ちのアカデミアの皆様、起業を志す皆様、一度ご相談してみませんか?

Special Lecture 1

アカデミア発創薬を目指した創薬ケミカルバイオロジー研究

掛谷 秀昭(京都大学大学院薬学研究科)

化学と生命科学の学際融合研究領域であるケミカルバイオロジー研究は、アカデミア創薬研究においても創薬シーズの探索・開発、創薬標的の探索・同定、化合物プロファイリングなどの観点などから非常に重要な地位を占めている。当研究室では、多因子疾患(がん、感染症、心疾患など)を標的としたアカデミア発のオリジナル創薬に向けて、3つの研究グループ体制(ケミカルバイオロジー研究グループ、天然物化学研究グループ、メディシナルケミストリー研究グループ)で教育・研究を展開している。本シンポジウムでは、革新的水溶性プロドラッグ型抗がん剤CMG(curcumin β-D-glucuronide)の開発研究を中心にアカデミア発創薬の醍醐味と起業(セラバイオファーマ株式会社)の経緯等に関して紹介する。

Special Lecture 2

アカデミアにおける基礎研究からグローバルメガファーマとベンチャーファーマにおける創薬研究と臨床開発まで。そしてAMED BINDSのPOとして期待すること

中島 元夫(SBIファーマ株式会社取締役執行役員 CSO)

創薬研究の手法は1970年代後半から半世紀にわたり大きな変革を遂げ続け、今やメガファーマ自身による新薬創製は下火となり、アカデミア発のベンチャーファーマから有力な新薬が生まれている。そしてその開発の中心は低分子化合物医薬から抗体医薬や核酸医薬、さらに遺伝子治療医薬へと変革を遂げている。演者は、アカデミアにおけるがん転移の分子機構の研究からがん領域における創薬研究に転身し、欧米のメガファーマ2社において新薬開発に従事し、さらに国内ベンチャーファーマの立ち上げに参画して、アカデミアとの共同研究から多くの特許を取得して、様々な治療領域で臨床開発を推進している。一方で、日本発のアカデミア創薬を推進するために、AMEDの創薬等ライフサイエンス研究支援基盤事業(BINDS)でケミカルシーズ・リード探索ユニット、ライブラリー・スクリーニング領域のプログラムオフィサーを務めている。これらの経験から、日本発の創薬を推進するために、産学連携のシーズ探索からトランスレーショナル・リサーチまでが如何にあるべきかを議論したい。

General Lecture

希少肺疾患におけるトランスレーショナルリサーチ

齋藤 充史(札幌医科大学医学部 呼吸器アレルギー内科学講座)

肺胞微石症(PAM)は肺胞II型上皮細胞におけるナトリウムリン酸共輸送体(Npt2b)の遺伝子異常が原因で肺胞腔内にリン酸カルシウム結石を生ずる常染色体劣性遺伝の希少肺疾患である。近年の全国調査において国内生存例は10例以下とごく少数であるものの、有効な治療法はなく、その開発が望まれる。これまでに我々は上皮特異的Npt2b欠損同疾患モデルマウス作製し、同疾患の治療法として低リン食療法・リン吸着剤の有効性を検討・報告してきた。超希少疾患のため大規模な臨床研究は難しいもののTSMTPで学んだ知識から、どのようにして動物実験から臨床応用へと橋渡しするかについて考える機会にしたい。


プロトコル作成支援を通して考えるTR

曺 圭龍(北海道大学病院 臨床研究開発センター)


橋渡し研究プロジェクトマネジメントを経験して感じたトランスレーショナル・サイエンスの重要性

神山 直也(旭川医科大学病院 臨床研究支援センター)

大学の研究シーズを医薬品・医療機器等の開発につなげ実用化を目指す「橋渡し研究(トランスレーショナル・リサーチ)」の推進については、官民からの期待も高く様々な研究助成が行われている一方、多くのシーズが学術研究から開発研究へのモードチェンジに苦戦しているといった現場の声をよく耳にする。近年、トランスレーショナル・リサーチを効率よく遂行するための考え方や原理について科学的に議論する学問分野として「トランスレーショナル・サイエンス」が提唱され、トランスレーショナル・サイエンティストのあるべき姿として、7つの素養(①分野の垣根を越えられる人材、②特定分野で高い専門性を持つ人材、③チームプレイを理解し実践できる人材、④革新的なプロセスを創造できる人材、⑤コミュニケーション力の高い人材、⑥俯瞰的な評価ができる人材、⑦厳格な姿勢で研究に取り組める人材)がまとめられるなど、新たな職能として確立しつつある。こうした取り組みの重要性について、橋渡し研究シーズのプロジェクトマネージャーとして感じたこと、経験したことを踏まえ紹介したい。


支援部門の臨床試験への対応と課題 ーアカデミアに来て、臨床試験を支援して感じたことー

小林 基博(山梨大学医学部附属病院臨床研究連携推進部)

私は、30年余りの間、製薬会社で基礎研究から臨床試験、そして、薬事監査業務と種々の臨床開発業務に携わってきました。また、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)のレギュラトリーサイエンス戦略相談課の約3年半では、アカデミアやベンチャー企業で研究された革新的医薬品や再生医療等製品の実用化に向けての臨床試験の薬事戦略相談を扱いました。そして、昨年の5月1日付で、山梨大学医学部附属病院臨床研究連携推進部に特任准教授として着任しました。山梨大学医学部附属病院は、特定機能病院として高度な日常診療ばかりでなく、臨床研究や医師主導治験の実施が求められています。そのような状況の中で、私は、臨床研究連携推進部で臨床試験の支援部門として、基礎研究から臨床応用への橋渡し研究、そして臨床試験の支援活動をどのように進めていけば良いか、知識を得るためにTSMTPに参加しました。

今回アカデミアに来て約半年、自ら臨床試験を実施する臨床医により臨床試験に取り組む姿勢や理解に差があり、試験は自ら臨床試験を実施する者の責任の下で実施されるべきものであるという認識が臨床医自身に低いことなど、臨床試験を支援して感じたことについてお話しさせていただきます。また、山梨大学医学部附属病院臨床研究連携推進部の臨床試験への取り組みについて紹介し、非拠点で実施可能な臨床試験の対応と課題について議論したいと思っております。

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